2006.2.3〜2.4  有明海ぐるっと一周

 まずは佐賀へ移動。この区間のほとんどは有明海から離れているので海の景色は望むべくもない。が、かわり?に建設中の高架橋が姿を見せた。全通まであと4年の九州新幹線である。
 2年ぶりに訪れた佐賀(駅)はずいぶん変わっていた。大きく変わったのがバスセンター。以前はコンクリむき出しの、冷たく、暗いイメージだったが、化粧版が取り付けられ、白を基調とした、暖かで明るく、清潔感のある場所に生まれ変わっていた。これならば十分に県都の表玄関として見劣りしない。
 その日は在籍していた研究室で2年ぶりに懐かしい面々と再会するとともに、お世話になった先生方に挨拶し、夜は飲みながら昔話に興じた。


新装なった佐賀駅バスセンター

 翌4日は朝から雪がちらついていた。えっ!?数日前の天気予報ではそんなこと全然言っていなかったのに…。おいおい大丈夫だろうな。雪に弱い南国だけに、不安が一瞬よぎる。


佐賀駅にて

のり漁場(JR長崎線・肥前飯田付近)

 ここ佐賀平野は米どころ。見渡す限りの田園風景が続く。そのうちに空はすっかり晴れてきた。いい天気になりそう。肥前鹿島を発車すると車窓には田んぼに変わって海が多くなってくる。ついに有明海とご対面である。時々海に網が張っている。ここは有数の海苔生産地。今年の生産高はどうなのだろう。このあたりは山が海に迫る地形のため、海岸の平地は非常に狭い。ある時は湾の地形を忠実になぞり、ある時はトンネル(国道は橋のことが多い)でやりすごす。列車はすいているので心置きなく駅弁が食べられる。それもそのはず、この列車は長崎行き特急の一番列車であり、そのため車内販売員も乗務していない。かなりさみしい。

 諫早で通勤客が大量に乗ってくる(土曜なのでそれほどでもなかったが)のと入れ替わりに下車。まずは島原鉄道の営業所に出向き、一日乗車券2800円也(注1)を購入。これは島鉄の列車のほか、バスも利用でき、さらに一回分の入浴券まで付いてくる。諫早−加津佐間は1970円なので、単純に往復すればもちろん(ただし、往復7時間はかかる。バスも乗れるので鉄道の走っていない半島の西側はバスでつなぐのがお勧め。そうすればちょうど一周できる)、途中何回か途中下車し、観光地めぐりや温泉に入れば十分に元の取れる値段設定ではある。ついでに「幸→吾妻」記念乗車券も購入。これは以前「愛しの吾が妻」に通じるという事で「愛野→吾妻」記念乗車券が発売されていたが、2000年に「幸」駅が出来たので「幸せを」をさらにくっつけて再登場させたようだ。これにより愛野−吾妻190円だったのが510円となり、旧バージョンを買った人にも勧められるので島鉄にとっては一粒で2度おいしい商品である。ちなみにそれぞれの駅名は「さいわい」「あいの」「あづま」である。
 発車してしばらくは佐賀平野と同じく田んぼが広がっていたが、吾妻駅を過ぎると急に海が広がった。その境界線にはまっすぐに伸びる堤防。そう、あのいわくつきの潮受け堤防である。ニュース番組で放映された、まるでギロチンのように投下されていく鉄板は見るものに強い衝撃を与えた。あれからまもなく10年。最近では話題にのぼる事自体が少なくなったが、あの工事が湾内そして有明海に与える影響、工事の是非などはいまだ決着がついていないようである。
 途中の駅では、だいたい乗降客もあり、けっこう身近に利用されているのがわかる。9時55分、島原着。降りてみると、寒い。寒すぎる。空はまたもや曇っている。雪もまたちらついている。そんななかまずは駅の目の前に見える島原城へ。ただし現在は工事中のようで城の全貌を見ることが出来ないし、さらに最上階の展望台まで閉鎖されている。いわば主役のいない芝居、主菜のないフルコース料理なのに入場料520円はディスカウントしないらしい。歴史に興味があるならともかく、それほどでもないので今回は見送るべきだった。

島原名物寒ざらし \300

島原駅にて

 なんだかんだとグタグタしているうちにバスの時刻が迫ってきた。あの有名な武家屋敷も3分の1しか歩かずに引き返す。その甲斐あってかなんとか出発時刻の5分前に島原駅に戻ってこれた。やれやれと気をぬいた瞬間、なんと目の前でバスがドアを閉め発車してしまったではないか。おいおいおいおい。あわてて追いかけたが無情にもバスはそのまま走り去ってしまった。後で調べたら最初予定していた「11時25分発」というのは島鉄バスターミナル発であり、島原駅前はその5分前に出るのであった。なんという鉄道マニアにあるまじき初歩的なミス。このバスで道の駅「みずなし本陣ふかえ」に向かい、導流提のすぐ横にある安徳駅から列車で原城方面へ向かおうと思ったが、予定変更を余儀なくされた。
 道の駅までのバスもあり散々迷ったが、結局列車で安徳に向かう事に。すぐ横に水無川の導流提があり、そこを越えるいくつもの橋が架かっていて、その先にはあの1991年6月3日の大火砕流で43人の犠牲者を出した平成新山がある。ここはどうしてもはずせなかった。
 安徳駅で下車。ここから道の駅目指して歩く。寒い。あちこちに空き地が見える。なんだか分譲中の新興住宅地のようだが、これはおそらく火砕流に見舞われた集落の区画整理なのだろう。一見のどかだが凄惨な過去があったはずなのだ。


水無川。両岸は導流堤。奥が平成新山

土石流被災家屋(入場無料)

 「雲仙岳災害記念館(がまだすドーム)」は入場料が1000円だったのでなんか入る気にはなれず、道の駅に隣接する「土石流被災家屋保存公園」へ。屋根まで土砂で埋まった家が生々しい。しかも(一軒を除いて)被災した場所にそのまま残しているのだからよりリアルである。
 ここからバスで原城へ移動。なんか最初の予定よりもかなり鉄道の乗車距離が少なくなるが、まあいいか。どちらに乗っても値段変わらないし(どちらも乗り放題)、たまには路線バスの旅もいいもの。人が乗り降りするときに「ピッ」っと音がするのでなんだろうと思ったら、IC定期券だった。こんな田舎のバスに(失礼)必要なのか?
 原城跡は思ったよりも大きかった。1637年に勃発した島原の乱では27000人もの一揆軍が立てこもったというが、なるほど想像していたよりも大きい。いまはその城跡のところどころで玉ねぎなどの農産物が栽培されているなど、のどかな雰囲気だが、乱の終結時にはその27000人がほぼ全滅(非戦闘員まで根こそぎ処刑されている)したという悲惨な歴史を持つ。その感傷に浸っていたら「ありがとうございます」の連呼で気分も台無しに。投票日を翌日に控えた長崎県知事選だろう。あいも変わらず馬鹿の一つ覚えみたいに候補者名とありがとうとよろしくを連呼している。でも結局はこんな人が勝利するのだから、この民あってこの政治家、なのだろう。


原城からの眺め

原城本丸跡にて

 本丸跡からの景色を堪能し、じっくりと遺構を見て回っていたら列車の時間が迫っていた。いや、迫っているどころじゃなく、かなりぎりぎりだ。しかも道がよくわからない。あわてて走る、走る。途中、地元のおじさんに近道を教えてもらい、わかりにくいながらも何とか道に迷わずにすみ、かろうじて間に合った。その激走のため結局は乗車した区間の半分は意識がない。
 終点加津佐駅は無人駅になっていた。ここからバスで小浜へ。海がすぐ近くに迫り、いい眺め。空はすっかり晴れ上がり、海面がきらきらと光っている。このあたりは過去一度旅した事があるが、何度見てもいい景色である。やがて遠くに温泉街が見えてきた。降りるべき停留所を見逃したためちょっと行き過ぎたが、時間もあるし、とのんびりと歩いて戻る。


(西有家町付近)

小浜温泉・春陽館

 ここまでくればもう旅もほとんど終わり。例の「遊湯券」の一回分の温泉を、ここ小浜地区に決めた。利用したのは「春陽館」。すごく堂々とした構えの、味のある旅館である。こんなところを無料で利用させてもらっていいんだろうかと恐縮してしまう。いい湯をいただいたせめてものお礼に、と今回のお土産はここでそろえることにした。
 さあ、あとは島原に戻るだけ。ちょっと早めにバス停に向かう事にした。ところが発車予定時刻を過ぎてもバスは一向に来る気配がない。もしや、5分以上前に早発したのだろうか?いや、さすがにそれはあるまい。だんだん不安になってきた。今日はバスに2回乗ったが、いずれも途中生じた遅れを取り戻せなかった。(注2)しかし今から乗る予定のバスと島原から熊本までのフェリーとの乗り継ぎ時間は定刻でも10分しかないのだ。乗船予定の最終便を逃すとあとは陸路しかなく、帰れないことはないがお金も時間もものすごくかかる。ようやく10分くらい遅れてバスがやってきたと思ったら、何か運転手が運転席でごそごそしていていっこうに発車する気配がない。こちらは一刻でも早く出発してほしいというのに何をやっているのか。発狂しそうであった。
 どうも前面上部の方向幕がうまく変わらないようだが運転手もあきらめて発車。雲仙への坂道をぐんぐん登っていく。小さな停留所をどんどん通過していく。路線バスながら途中、要所要所で観光案内が流れるが、時間が気になり、まったく耳に入らない。その案内放送も、雲仙で観光客らしき乗客を降ろしたあとは流れなくなった。もとよりこの時間になるとあたりは真っ暗になり、景色はほとんど望めない。手元のバス時刻表と時計をにらめっこしていたが、遅れは順調に取り戻せているようだ。この区間はカーブが続くが、この運転手は回復運転に最大限努めてくれているようだ。島原港に到着したときはむしろ2分ほど早着(手元の時計で)していた。
 あとは「九商フェリー」に乗れば、1時間後には熊本に到着である。(注3)

注1:このほか第4日曜日限定、入浴券なしの「のんびり1000」(\1,000)、小学生限定、土日祝日春夏冬休み限定、入浴券なしの「ちびっ子島原半島体験隊」(\500)などがある。いずれも2006年4月1日の島鉄運賃改定により値上げされる。
注2:以前高速バスをつなぎに利用した際、途中十分に回復できるチャンスがあったにもかかわらず、結局遅れをそのまま引きずらせて目的の列車に乗れなかった事がある。以後、バスとは時間にこだわらない乗り物だ、とあきらめた。
注3:季節によって時刻が違ってくるので要注意。最初は熊本フェリー(株)「オーシャンアロー」に乗船しよう(こちらが早い&値段も手ごろでお奨め)と思っていたのだが、この季節は最終便が運行されないとあとでわかり断念。これだと島原外港発19:20だから、すぐ近くの無料の足湯も利用できたのに…。またお土産を小浜でそろえた理由でもある。

本ページにある地図画像は「白地図KenMap」を用いて作成しています。

旅データ


日程表(カッコ左は到着時刻、カッコ内は乗換駅、カッコ右は出発時刻)
06.2.3(金)(肥後大津)12:46 → 13:16(熊本)13:30 ―〔特急リレーつばめ46号〕→ 14:33(鳥栖)14:36 → 15:00(佐賀)
  2.4(土)(佐賀)7:15 ―〔特急かもめ1号〕→ 8:17(諫早)8:38 → 9:54(島原)12:11 → 12:26(安徳―(徒歩)→道の駅みずなし本陣ふかえ)13:35 → 14:10(原城前)15:10 → 15:28(加津佐)15:52 → 16:27(石合浜小浜バス発着所)17:41 → 18:45(島原港)18:55 → 19:55(熊本港)20:05 → 20:28(熊本)20:33 → 21:14(肥後大津)

旅費内訳
交通費\8,940
駅弁(2個)\1,730
 その他食費\3,344
宿泊費\3,600
その他\1,680
\19,294

 乗りつぶし記録
(今回の路線はすべて乗車済み)

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